鎌田 慧:ドキュメント 屠場 (1998)
6 月 27th, 2006
牛、豚を解体し食肉化する「屠場」や、そこで働く労働者たちを取材したルポ。一般にはなじみの無い食肉加工のレポートも興味深いが、同時に従来から根深い差別問題にもフォーカスする。
差別問題に関して本書を読んだ限りでは、労働者たちの社会闘争が何をゴールにしているのかという点にわかりずらさがあるように思う。蔑視や偏見が解消されることだろうか。あるいは過去にあったタダ働きの風習的なものを解消して、待遇をよくすることだろうか。
本書で登場する熟練労働者は、最近の機械化された工程では歩留まり(食べられない部分を廃棄して残った割合)が悪くなると嘆き、熟練者の職人芸をすばらしいという。しかし、熟練者に使う人件費が機械化の費用を大きく上回り、それが歩留まりの上昇でカバーできないと、経営者は熟練労働者を何人か減らそうと考えるかもしれない。ひょっとしたら差別問題のゴールは、そうした労働者の減少によって起こる運動自体の終焉かもしれないのだ。
【関連書籍】
溝口敦:食肉の帝王 (2004)
同和問題を巧みに利用して巨大企業グループを築いた、浅田満のノンフィクション。


