脱北者
7 月 2nd, 2006
技術者で当局の諜報活動も勤めた著者による、母国脱出の手記。国境近く、中国北朝鮮族の町で暮らしていた著者ら家族のもとへ、中国公安当局が踏み込んでくる。著者は北朝鮮に送還され、警察当局の監獄に収監される。凄まじい暴力と奴隷的な労働を強いられながら、それでも何度も脱北を繰り返す。
村上龍は半島を出よの中で、「日本人は暴力に慣れていない」と書いたが、そのとおりだと思う。ついに命を失った著者の遺稿をまえに申し分けないが、凄惨すぎて距離感を感じる。
尊厳を踏みにじられた人間が復活する話としては、戦場のピアニストを思い出す。映画といっしょにしてしまって悪いが、自分がもし理解できる点があるとすれば、そうした点であろう。こんなに厳しい人生を送っている人がいるのなら、自分の日常的な問題など、本当に些細なことだと思う。


