吉村昭:島抜け (2002)

7 月 11th, 2006

幕府に反抗的な講釈を行って遠島刑をうけた端龍は、同じ境遇の罪人に引きずられて追放先の種子島を脱走する。生命をかけた太平洋上の逃亡をへて、長崎へ戻るが、今度は役人たちの追手が忍び寄る。

端龍はスケープゴートにされる形で遠島という過分な重刑を受ける。しかし島抜けによって、捕縛されれば死罪を免れない本当の重罪人となり、選択は逃亡しかなくなる。

彼の逃亡によって制裁を受けることになる、種子島の庄屋や牢番役人の葛藤が、江戸時代と現代の相違や同質な点を際立たせて興味深い。法による制裁の厳しさは現代と異なるが、制裁を恐れて行動が変容する人々のありようは現代と変わらないであろう。

ほか、飢饉による逃散を余儀なくされた農民を描く「欠けた椀」、明治維新後の献体による人体解剖と解剖学の発達を描いた「梅の刺青」を収録した短編小説。

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