警視庁捜査一課特殊班 (2004)

7 月 18th, 2006

誘拐、立てこもりなどの危機的犯罪を専門に扱う、警視庁捜査一課特殊班の活動をまとめたノンフィクション。扱っている実際の事件は、昭和60年代から平成元年以降の数年内に起こったもので少々古いが、緊迫した捜査活動の内容が詳しく述べられている。

本書を読むと、誘拐など緊急対応を要する犯罪が、少しの失敗で恐ろしく結末が変わるのだという厳しい現実があることに気付かされる。誘拐犯からの電話の逆探知は、体勢を整えるまで時間がかかるし、家族らの協力も不可欠である。例え逆探知に成功しても、犯人がすばやく移動すれば補足は容易でない。犯人補足のために、広域に人員を配置しようとすると、訓練を受けていない警官まで駆り出すことになり、訓練のあるなしは緊急時の対応を大きく分ける。

人員が広域に点在すると、企業組織でもよくあるコミュニケーションの問題が発生する。誘拐などは保安上、通常の警察無線を使えない場合もあるため、コミュニケーションの失敗が危機につながる。特殊班の事件は、通常業務と異なるプロジェクトチーム形式で操作にあたるが、これはコミュニケーションの問題をさらに深刻にする。

なじみのない特殊班の内幕が詳しくわかるのはいいが、人物のしゃべりが刑事ドラマじみているのはなんとなく辟易する。本当にそうしたセリフをしゃべっているのかもしれないが、せっかくのリアリティが台無しである。多くは捜査官へのインタビューを元にしているようだが、人々の記憶は時間経過によって変化するものである(菊野春雄:嘘をつく記憶(2000))。むしろ家族を思って強行突入を断る警官のほうが、リアリティを感じさせる。

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