暗い森―神戸連続児童殺傷事件 (2000)
7 月 27th, 2006
1997年の神戸市で、小学生男児が殺害された上、首を切られて中学校の正門前に放置される猟奇殺人が起こった。本書は、この一連の事件をまとめたノンフィクション・ドキュメント。加害者が14歳の中学生であったことで報道が過熱し、少年法改正の論議に及ぶなどした(WikiPedia:神戸連続児童殺傷事件)。事件の経過はもちろんのこと、話題になった犯行声明や、家庭裁判所の処分決定要旨なども全文掲載されている。
この事件は、被害者、加害者にとっても大変な出来事だと思うが、それ以上に周囲の人物たちの苦しみがあるように思う。例えば、加害者の母親は、犯行に先立って児童相談所を訪れている。本書では、母親が無意識のうちに危機感を感じたうえでの行動と想像しているが、おそらくその通りであろう。しかしながら、少年審判の決定要旨などを読むと、生育歴のなかで母親との関係に少しばかりの問題があったことも指摘されている。こうした指摘は、母親や両親を苦しめたに違いなく、本書末尾に掲載された両親の謝罪文からも、困惑や悲しみなど複雑な感情が読み取れる。
本書の述べるところでは、加害者周囲のいずれもが、加害者を受け止めることができず、不運が重なったとしている。こうした社会システムの弱点は、加害者の少年ばかりでなく、社会生活をする人すべてにとって当てはまることであろう。また、大多数の人は、加害者の周囲と同じ立場に立たされたとしても、具体的な行動は取れなかっただろう。そうした点でも非常に難しい事件で、同時に重要な問題提起があるように思われた。


