溝口敦:食肉の帝王 (2004)
11 月 19th, 2006
食肉関連業「ハンナン」グループのトップに立つ、浅田満を扱ったノンフィクション。浅田は、被差別地域出身という出自ながらも政界や同業者、暴力団、同和問題の活動グループなどへのパイプを活用し、巨大な企業グループを形成するに至った。重要人物でありながら一般に知られていないのは、浅田自身が意図的に隠れようとしている点と、メディア関係者らにとってタブーになっているという点があるようだ。
人脈を活用した事業展開で興味を引くのは、部落解放同盟をはじめとする活動グループと、行政機関のパワーバランスに便乗する点だろう。活動グループのエセ同和と呼ばれるごり押しは、行政機関によくある事なかれ主義と見事に調和して、結果的に公金がハンナングループへ流れていくという構造を生み出す(Wikipedia:えせ同和行為、同和利権の真相)。
こうしたエセ同和による構造は、最近では2006年秋に奈良市職員におさまった部落解放同盟の奈良県連幹部が、ほとんど出勤しないにも関わらず市職員としての給与を得ていたという事件にもあらわれている。こうした構造があることを考えると、差別問題を扱う他の本、例えば鎌田慧:ドキュメント屠場(1998)の内容にも奥行きが出てくる。つまり、一般社会へ影響力を発揮することや、そうした影響力を行使できる可能性を基盤として、政治家らへの人脈を築くことも可能になるのだろうと推測できる。
肝心の浅田満に関する著述としてはかなり詳しいのだと思うが、やはり現在進行中のお話しということもあって取材に相当の困難があったようだ。同氏の話題があらゆる立場から客観的にかつ詳細に書かれるのは、おそらくもっと時間が必要だと思われる。浅田と関連する人物についても、その人物の社会的文脈まで網羅するには枚数が足りなかったのか、背景知識が無ければ本書を楽しむというところまで到達できそうにない。とはいえ、一般のメディアに登場しない話題でもあるので、そうした点では貴重である。
【関連書籍】
鎌田慧:ドキュメント屠場(1998)
屠場労働者に取材したノンフィクションで、職業差別問題も扱う。


