11 月 26th, 2006
徳川将軍家の大奥に関する日本史解説本。御台所や側室の話しも面白くわかりやすいが、現代のキャリアウーマンと重ね合わせた大奥女中の解説が興味深い。
大奥女中は、将軍側室候補という意味合いもあるが、大奥の実務面で強大な権限を持つ御年寄に連なるキャリアウーマンでもある。また、大奥での奉公経験は、現代の一流企業一般事務職のように、花嫁の経歴に箔をつけ、よい縁組を得るきっかけになるという。(Wikipedia:大奥)
大奥というと、すべて将軍の子作りのためにあると思いがちであるが、本書が示すように、女性の経歴として非常に有望な舞台でもあった。大奥女中のスタートは、多くは幕臣の子女が幼い頃から大奥入りし、雑用からはじまって次第に要職へと上り詰めていく。幸運な幾人かは将軍お手つきとして側室となり、子が生まれて成長し、さらにその子が将軍になれば、将軍生母として強力な権限と華やかな生活を享受することができる。
そうした将軍生母へつながるキャリアパスとは別に、御年寄を最高位とするキャリアウーマンとしての道も用意されている。キャリアウーマンの大奥女中として権勢をふるったものとしては、古くは3代家光の乳母でもあった春日局、5代綱吉の頃にスキャンダルで遠島刑になった絵島(江島生島事件)などが有名である。ほかにも、綱吉のころ、中宮付きの宮廷女官からいきなり上臈御年寄として大奥入りした右衛門佐、家斉のころに老中水野忠邦をやりこめた姉小路など、魅力的な人物の来歴が語られる。
【関連書籍】
鈴木尚:骨は語る 徳川将軍・大名家の人びと (1985)
将軍家墓所の発掘調査から、将軍や御台所の生活史を明らかにする。
大奥の奥 (新潮新書) 鈴木 由紀子
新潮社 (2006-11-16)
ISBN-10: 4106101912
ISBN-13: 9784106101915
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11 月 19th, 2006
江戸時代、将軍や公家、有力大名に嫁いだ姫を扱った本。姫の生活や輿入れ前の政治事情、輿入れ道中の様子などを当時の史料や写真をもとに描き出す。上級公家や将軍の娘が大名に嫁ぐことで、実質的には「夫より上位の妻」ができあがるが、明治以降はそうした姫の話題が巧妙に隠され、「夫に仕える従順な妻」に書き換えられていったという。その背景には、男尊女卑的なイデオロギーにとって都合の悪い、「夫より上位の妻」を隠したいという意図があったと指弾し、そのとばっちりで姫の話題はマイナーになったと主張する。
個人的なイメージでは、こうした日本史解説本の著者は年配の大学教授や作家で、表紙見返しに写真を載せたりする人は、本書以外では今まで知らない。本書の著者は、肩書きでは法学領域の専門家で、本を開いて最初にある略歴ではかなり違和感を感じる著者だと思ったのだが、やはり何か独自の主張したいところがあってそうしていたのだというのがわかると、少し残念に思った。
そういう著者の意図がわかっていれば、なぜその姫を話題として扱うのかがわかってくるのだが、通常の日本史本に慣れた人にとっては、各エピソードの前後で違和感を感じるだろう。無料サービスにつられて入った事務所で、何万円もする商品を買わされた気分である。
姫に着目する点も、夫より上位におかれた姫が婦徳に置き換えられたという仮説も着眼点としてかなりいいが、単純に日本史や過去の人物の人となりに触れたいという人には向かない本である。
【関連書籍】
鈴木由紀子:大奥の奥 (2006)
大奥のエピソードを、細やかな史料解釈とともに語る。
鈴木尚:骨は語る 徳川将軍・大名家の人びと (1985)
将軍家墓所の発掘調査から、将軍や御台所の生活史を明らかにする。
大江戸の姫さま (角川選書) 関口 すみ子
角川書店 (2005-08-27)
ISBN-10: 4047033812
ISBN-13: 9784047033818
カテゴリー: 歴史 |
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11 月 19th, 2006
食肉関連業「ハンナン」グループのトップに立つ、浅田満を扱ったノンフィクション。浅田は、被差別地域出身という出自ながらも政界や同業者、暴力団、同和問題の活動グループなどへのパイプを活用し、巨大な企業グループを形成するに至った。重要人物でありながら一般に知られていないのは、浅田自身が意図的に隠れようとしている点と、メディア関係者らにとってタブーになっているという点があるようだ。
人脈を活用した事業展開で興味を引くのは、部落解放同盟をはじめとする活動グループと、行政機関のパワーバランスに便乗する点だろう。活動グループのエセ同和と呼ばれるごり押しは、行政機関によくある事なかれ主義と見事に調和して、結果的に公金がハンナングループへ流れていくという構造を生み出す(Wikipedia:えせ同和行為、同和利権の真相)。
こうしたエセ同和による構造は、最近では2006年秋に奈良市職員におさまった部落解放同盟の奈良県連幹部が、ほとんど出勤しないにも関わらず市職員としての給与を得ていたという事件にもあらわれている。こうした構造があることを考えると、差別問題を扱う他の本、例えば鎌田慧:ドキュメント屠場(1998)の内容にも奥行きが出てくる。つまり、一般社会へ影響力を発揮することや、そうした影響力を行使できる可能性を基盤として、政治家らへの人脈を築くことも可能になるのだろうと推測できる。
肝心の浅田満に関する著述としてはかなり詳しいのだと思うが、やはり現在進行中のお話しということもあって取材に相当の困難があったようだ。同氏の話題があらゆる立場から客観的にかつ詳細に書かれるのは、おそらくもっと時間が必要だと思われる。浅田と関連する人物についても、その人物の社会的文脈まで網羅するには枚数が足りなかったのか、背景知識が無ければ本書を楽しむというところまで到達できそうにない。とはいえ、一般のメディアに登場しない話題でもあるので、そうした点では貴重である。
【関連書籍】
鎌田慧:ドキュメント屠場(1998)
屠場労働者に取材したノンフィクションで、職業差別問題も扱う。
カテゴリー: ノンフィクション, 社会病理・犯罪 |
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11 月 12th, 2006
陸軍中野学校出身者が、戦後どうなったかに焦点をあてた本。同校で教育を受けた情報将校は2131名、うち戦死289名、消息不明376名となっている。消息者の内訳は、戦犯として裁かれ巣鴨プリズンに収監されたもの、実業家として国内外で成功したもの、GHQスタッフになったもの、自衛隊で有力な地位を占めたものなどがいる。本書は、いくつかのケースについて取材や本人インタビューをおこない、諜報員たちの戦後史を明らかにしている。
多くは関係者本人へのインタビューによるノンフィクション形式で、戦犯になったものの話しや、GHQスタッフになったものの話しが収録されている。ただ、全般的に著者の主観による記述が多く、事実のみを拾い出して淡々と記述するという形式ではない。中ほどに下山事件と中野学校出身者との関わりについて取材した章があるが、ほとんどのインタビュイーが仮名のうえ著者の感情が前に出すぎており、完全に客観性を欠いてしまっている。Wikipedia:下山事件によると、事件に陸軍関係者が関わったというのはそれほど遠い推測でもないようだが、それだけに残念な点である。
とはいえ、著者の地道な取材による成果は確実にあがっている。巻末に収録されている、中野学校のゲリラ戦教育に使用されたとされる教材は、その実践的な内容に陸軍中野学校の存在感を感じることができるだろう。
【関連書籍】
小野田寛郎:たった一人の30年戦争 (1995)
小野田は、陸軍中野学校・二俣分校でゲリラ戦の教育を受けた。
カテゴリー: 太平洋戦争 |
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11 月 11th, 2006
RSSと、インターネット広告ビジネスを扱った本。RSSが一般的になったのは、ユーザ自身がコンテンツを作成する仕組み(CGM)の普及があった。本書はそこから一歩進めて、RSSがビジネス上の機会とどのように関わるかを述べている。
日本国内では、おそらく2004年以降のブログ・ユーザの拡大により、RSSも広告市場での基盤を得た。RSS広告は、RSSのエントリに関連するテキスト広告やバナー広告を挿入することで成立するものである。その背景には、スパムメールの増大により広告メディアとしてのメールの衰退や、RSSや検索エンジンの発達の影響を受けた、固有ページへの直接アクセス増大によるトップページ広告の衰退などがあると本書は指摘する。
ネット上の書評サイトやAmazonのレビューで高評価を得ているのも、このあたりの考察にあるものと思われる。RSS広告の発達が、RSSの普及自体にあったのか、RSSリーダーの普及による潜在広告閲覧者の増大にあったのか、そのあたりははっきりしないけれども、Google AdsenceのようなコンテンツマッチをRSSでも可能にし、かつ市場が発達した背景がよくわかる。インターネット・サービス収益化の一角を占める広告ビジネスが、どのように成立するかという点でも、大きなヒントを与えてくれる。RSSに限らず、インターネットでの新規ビジネスを検討している人にとって役立つだろう。
カテゴリー: IT・Web |
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