3 月 11th, 2007
フリーランス風の就業形態をヒューマン2.0と呼び、シリコンバレーでの実体験や観察、豊富な文献を元にその就業形態の詳細を述べたもの。仮定されているはずのヒューマン1.0とは、おそらく日本の伝統的な正社員雇用の就業形態のことだろう。流行キーワード風のタイトルであるのは、マーケティング上の配慮と思われる。
フリーランスの就業形態に関する話は、舞台がシリコンバレーである点を除けば目新しいところはない。当地では就業人口のうち15-30%がフリーランスとされている。30%だとかなり多いなという印象を受けるが、下限の15%だとそうでもない。日本での自営業者の割合は、全国平均で11%である (矢野恒太記念会:データで見る趨勢2007年版より)。フリーランスと自営業を同じとしてしまうのは少々乱暴だが、それでも企業の庇護下にない者の割合という意味では、1割程度で大きいとはいえないだろう。(15-30%と、幅があるのが気になるが)
長期安定雇用がその人の能力開発にとってリスクだというのは、今さらながら気づかされた気がする (pp.87-88)。雇用と人材の市場がシリコンバレーほど流動的でない日本では、実際の生活の上では直接的な脅威になっていない気がするが、現実的には能力開発の機会を失っているだろう。
個人的には能力開発の機会損失は大きく見積もるが、多くの日本人の共通認識はどうなのだろうか。能力が無くても給料がもらえるから、長期安定雇用こそ勝ち組みなのだろうか。それとも万一に備えて、会社を替わってでも能力開発の機会を取るのだろうか。
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10 月 14th, 2006
獣医学者で、動物の遺体解剖を天職とする著者による本。動物の体を系統と適応という2つの観点から分析し、素人にもよくわかるストーリーにブレークダウンする。それは極めて示唆に豊んだ物語やエンターテインメントへと変化し、最先端の知が人々の日常とつながっているのだと思わせるリアリティがある。
例えばゾウの腎臓にある溝が、クジラ、イルカ、シロクマのもつ葉状腎の名残ではないかという仮説を提示し、5000万年前のゾウの祖先は海を泳いでいたのではないかと言ってみせる。遺体解剖とその所見という専門化レベルの話が、こうした面白いイメージとつながってしまうのでは、著者がこれほどまで解剖に熱中するというのも理解できるところである。
解剖男 (講談社現代新書) 遠藤 秀紀
講談社 (2006-02)
ISBN-10: 4061498282
ISBN-13: 9784061498280
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7 月 29th, 2006
問題の設定、仮説の構築、仮説検証のための社会調査の設計や分析手法など、社会科学分野ではおなじみとなった手法の解説書。その分野で研究論文やレポートを書く大学生、大学院生に適している。
こうした手法は、先輩の論文や学会論文誌などを読むことで身に付けていくことができると思うが、なぜそんな手法が一般的になっているかといった原理、原則に踏み込む機会はあまりないと思う。先生方も、一般的約束として話しはするかもしれないが、それ以上は面倒くさがって教えたりはしないかもしれない。約束を知って使うことができるのは結構だと思うが、思想的背景の理解がなければ、手法をツールとして使いこなすまでは至らないだろう。
本書では、60年代の学生運動をはじめとした著者の思想遍歴、留学経験などを交えながら、現代の社会科学における研究手法が開発された経緯を知ることができる。著者の経験談は、方法論の解説にありがちな抽象的な話しを、ひとつの事例として具体化する効果があり、大変わかりやすい。
学生ではない社会人でも、問題設定や調査設計が重要なミッションである商品企画、マーケティングに携わる人であれば、多くの示唆が得られると思う。20年以上も前の本であるが、現在でも通用する思想的ツールを与えてくれる。
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7 月 9th, 2006
パラサイトシングル、フリーター現象を、社会的な枠組みの観点から分析、解説したもの。男女同権にはじまる性役割の均質化、世代間の職業待遇格差、親子の消費市場での役割同質化など、断片的な2者間の社会格差変容が、若者のパラサイトシングル、フリーターといった社会現象につながっていく。
女性は家庭に入って子供を養育し、家事をこなすのがあたりまえであるというのは、男女同権のうえで理不尽な観念である。しかし、そうした従来の観念に疑問符がつけられていくことは、女性が社会の中でアイデンティティーを確保しようとするとき、必ずしもよい影響だけを持つとは限らない。本来は、単純に選択肢が広がっただけのはずなのだが、従来観念を選択したい女性のアイデンティティは危うくなる。
最終的に著者は提言を行っているが、それらの提言は政策立案者の立場でおこなわれており、すなわち文科省の紐付きで研究活動をしていたりする著者の立場のものである。若者の味方だと思って読んでいると、最後におあずけを食ってしまう。
読者が当事者の一方である若者たちならば、自分の現状は社会のせいだからどうしようもないと思って安心するのではなく、先生の分析を参考に今どうすべきかを考えたほうがいい。
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7 月 1st, 2006
世の中にあふれ返る社会調査を反面教師とし、どんな点に注意すれば調査の真意を読み取ることができるか、あるいはどんな設計であれば有効に機能する社会調査を作ることができるか、という点を述べる。日ごろメディアを通して多くの社会調査に接する人には、それらの本質を見抜く力を与えてくれる。また、社会調査の設計が切実な問題となっている大学生、大学院生、企業の調査部門人員などに適している。
著者が「リサーチ・リテラシー」と呼ぶ調査結果の本質を見抜く力は、健全な社会運営に欠かせない重要なものである。しかし、ステレオタイプかもしれないが、日本人とその文化は、周囲を気にしがちで同質化傾向が強いため、他人との差異が明らかになるようなものを好まないかもしれない。そのうえ、多くの平均的な人々は、世の中を客観的に知りたいわけではなく、おそらく耳に心地よいことだけを聞きたいと考えているのではないかと思う。リサーチ・リテラシーは重要だけれども、残念ながら需要がないのではないかと考えた。
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