大村大次郎:脱税のススメ―バレると後ろに手が回る (2004)

3 月 9th, 2007

著者は国税庁の法人担当として10年勤めた後、現在は経営コンサルタント。

本書の基本内容は、著者の他の本と同様である(「税務署なんか怖くない」参照)が、後半には本書独自の内容が含まれている。

まず脱税の手口として、収入の除外、経費の仮装、在庫の除外をあげ、それぞれについて詳細な手口とその発覚難易度を上げている部分は非常に興味深い。しかし著者も述べているとおり、重要なのはそれらの手口が税務調査官にとっては既知の事項であって、本書に載っている程度の手法では駄目なのだということであろう。

それでも読んだ印象ではなかなか手が込んでいるものがあって、「いけるかも」と思ってしまうが、おそらく読み手の税務・経理の知識が浅いからそういう印象をもつのであって、税務調査官のようなプロフェッショナルにとっては、お見通しもいいところなのだろう。

末尾には、著名人による脱税ニュースを取り上げて解説する。手の込んだ手口の解説の後で読むと、それらの脱税手法が以下に稚拙で幼稚なのかと思わせるという、興味深い構成になっている。

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大村大次郎:税務署なんか怖くない (2005)

3 月 9th, 2007

中小企業の経営者向けに書かれた税務署や税務調査に関する本。著者は国税庁の法人担当として10年勤務し、現在はコンサルタント。

会社経営を始めると、今まで縁の無かった税務署といきなり関わざるを得なくなる。税務署や税務調査とはいったい何なのか、そのときどうすればいいのか、やっぱり追加で税金を払わなければならないのか。本書の内容は、そうした無知からくる税務署への過度な恐れを回避するための材料になる。

内容としては、実例を交えた税務署や税務調査の内側を解説している。例えば、赤字法人が税務調査されにくいというのは本当なのか、税務調査が空振りにならないように調査官が指摘する余地を作っておくべきなのか、無届・無申告はどうなるのか、修正申告をすべきなのか、といった都市伝説的なものから実践的なノウハウまでが述べられている。

そのほか経費が否認される事例や、調査官が着目する点(期末の売上計上、原始記録)、反面調査や内偵などの調査手法にも話は及ぶ。読んで分かるのは、税務署職員も基本的にはサラリーマンであって、業績を上げるために税金を取ろうというインセンティブがあることと、経歴の汚点になる「申告是認」(調査しても何も指摘事項が無いこと)や修正申告を取れないことなどは回避したいという意図がありそうだということだろうか。

著者の税務署関連の本はかなり多いのだが、以上にあげる内容がどの本でも重複しており、2-3冊読むと十分になってしまう点が残念なところではある。

税務署なんか怖くない
税務署なんか怖くない
大村 大次郎
あっぷる出版社 (2005-04)
ISBN-10: 4871772446
ISBN-13: 9784871772440

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山本譲司:累犯障害者 (2006)

2 月 24th, 2007

刑務所を出所しても再び犯罪を犯し、刑務所に戻ってくる障害者に焦点をあてたノンフィクション。著者は、よく刑務所モノを書いている安部譲二とはジョージ違いで、元衆議院議員。演歌歌手でもない。公設秘書の給与を流用した罪で服役し、その際に本書につながる累犯障害者らと出会った。

2001年に浅草の路上で短大生が惨殺された事件を記憶の人は多いと思われるが、その犯人が障害者であったことを知る人はほとんどいないだろう。本書冒頭では本事件の顛末を述べるほか、
・障害者を利用して未解決事件の犯人に仕立て上げる警察・検察
・障害者の身元引受人になって養子とし、障害者年金を横取りするやくざ者
・売春に存在価値を見出すが、その意味がわからず女衒に搾取される障害者親娘
・健常者が知りえないろうあ者独自の文化
など、衝撃的で新鮮だがやるせない話が続く。障害者が健常者の文脈で犯罪を犯しているのではなく、健常者との文脈の相違によって犯罪者とマーキングされているのである。

また、ろうあ者が使う手話が、日本語対応手話とろうあ者が使う手話に実質分かれているという指摘には驚かされる。この言語としてのろうあ者手話によって彼ら独特の文化が生じており、ろうあ者コミュニティは良くも悪くも強い結束と閉鎖性を持っているという。

著者の視点は多面的で、できるだけ建設的にあろうという誠意が感じられる。根本的な問題の解決はそう簡単にいかないであろうが、ベストセラーという形態で社会に素材を提示した点は、賞賛に値する。

累犯障害者
累犯障害者
山本 譲司
新潮社 (2006-09-14)
ISBN-10: 4103029315
ISBN-13: 9784103029311

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中嶋博行:君を守りたい (2006)

1 月 5th, 2007

いじめを受けている被害者を緊急に救済するという観点で、いじめ対策の言説を述べた本。著者は弁護士で、文芸書や漫画原作の作家でもある。

冒頭では、性暴力や被害者の自殺にいたったいじめの事例が紹介されている。当事者や周囲の人物の行動や態度が詳しく記述されており、これがごく一部であったとしても、これほどひどいことが起こっているという現実に驚かされる。

一般に知られているように、私立学校ではいじめ加害者に対して退学等の厳しい処分が下される。本書では、2005年の週刊朝日に掲載された事例で、いじめ加害者の中学生が即日退学処分になったものを紹介している。加害者はある日、母親同伴で学校に呼び出される。学校にはすでに幾人かの生徒や保護者、教師らがおり、その場で退学処分を通知されたという。

こうした事例もやはりごく一部なのかもしれないが、そんなに厳しい学校もあるのかと驚かされる。放逐された加害者は裁判所に持ち込んだが、退けられた。この元・中学生は、その後どうなったのだろうか。

筆者はこうした状況を踏まえて、学校にはいじめを解決する能力がないと指摘し、加害者の自主更正に期待する立場や、いじめを集団全体の問題ととらえる立場が、いじめ加害者を助長させてきたと攻撃する。そして、いじめを主導する特定加害者に限定しつつ、出席停止や退学など厳罰運用による抑止力こそいじめ解決につながると主張する。

おそらく中学生らにも読まれることを考慮してか、文章は平易でボリュームも多すぎず、さらに説得力があってよい。しかし、教育性善説の立場(多くは公立学校関係者か)からすると、面白くないだろう。むしろ、個人的には学校がいじめを解決できないのは構造的なものであって、学校というより日本人の集団形成はそうした欠陥を含んでいるものであるからと考える。これだと筆者の立場からは「いじめ宿命論か」と言われそうだが、そんな単純な話しではない。

例えば、発言力の強い誰かに引きずられて集団の意思になるという構造は、日本の社会によく見られるものである。そうした意思決定を尊重することが大人になることだとか、世間を知ることだとされる。集団の意思決定の原因になった者を特定し、それに対して罰をあたえるというスキームは、暗黙の社会構造に反するもので、広く一般の支持を得られないかもしれない。

意思決定者に厳罰を与える仕組みは、おそらく社会の既得権者に刃をつきつけることになるだろう。例えば、「誤った意思決定者には厳罰を」の教育をうけた若者が新入社員として入社してくることは、多くの無能な管理職(=意思決定者)にとって針のむしろになる。それで無能な管理職が一掃されるのはいいことなのだが、多数派を形成する無能意思決定者らは、これを支持するだろうか。

多数の支持がなければ、民主主義社会で変化が起こることはない。集団の中に隠れて身勝手な意思決定を行ってきた者に厳罰を与える「健全な」社会は、果たして実現するのか。

【関連書籍】
今野敏:慎治 (1997)
いじめられていた冴えない中学生の慎治が、いじめっ子をやっつけるまでの話し。

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門倉貴史:マネーロンダリング(2006)

12 月 17th, 2006

マネーロンダリングについて解説した本。マネーロンダリングとは、非合法な手段であげた収益の出所をくらますために移動、あるいは形を変えて保管すること。(Wikipedia:資金洗浄)

例えば強盗で得た現金は、あらかじめ番号が控えられていたり、強奪時に目印がつけられていたりする。そのまま使うと犯罪で得た資金であることを明らかにするようなものであるから、別の紙幣に交換できればよい。このようなケースの事例として、韓国へ持ち込んで資金洗浄したとか、非合法カジノでチップと交換した後、再度現金化したとかいうケースが語られる。そのほかにも、有名なオフショア・バンクを利用する事例や、ネット・オークション、株式市場の親交株を利用する事例などが語られる。こうした金融犯罪は、一般のニュースではあまり目にしないだけに、本書のような平易な説明は非常に貴重である。

後半では、マネーロンダリングと関連した犯罪事案に関するレポートになっており、政治汚職、覚醒剤ビジネス、地下銀行などが語られている。

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