今野敏:慎治

7 月 3rd, 2006

気弱な中学生の慎治は、優等生グループにいじめをうけていた。ついには自殺を考えるが、担任の古池に察知される。古池は、自殺するくらいなら学校へ行くなといい、自宅に慎治を引き込む。そこで慎治はガンプラ作りに夢中になり、古池の友人からサバイバルゲームや格闘技の手ほどきをうけ、学校とは別の世界が大きく広がっていたのを知る。

外側の世界から学校の枠組みを相対化できれば、学校の中での価値体系は強さを失い、いじめの解消に一役買うだろう。しかしそれは、学校それ自体の価値を否定することにつながりかねない。むしろ学校は、そこで優先されるような価値観がこの社会をおおっていることを身をもって知る場所である。卑劣ないじめっ子が放置されるという、綺麗事が通じない欠陥社会に、我々は生きているのである。

現状では、いじめを解決するには個人の努力しかないというのは、担任の古池が言っているとおりであると思う。そうでなければ、枠組みの秩序はくずれさる。「自分が死ぬくらいなら、相手を殺すしかない」と古池が言うように、殺人すら肯定される混沌とした世界が広がってしまう。

だからといって、周囲が何もしなくてよいということではない。自分一人ではないと思うように、彼らを強くバックアップする必要がある。それに、そうして若い彼らに広い世界を教えていくというのは、きっと楽しいことであろう。

【関連書籍】
中嶋博行:君を守りたい (2006)
いじめ被害の事例を紹介し、救済策を提言。

慎治
慎治
今野 敏
双葉社 (1997-08)
ISBN-10: 4575233080
ISBN-13: 9784575233087

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