3 月 9th, 2007
著者は国税庁の法人担当として10年勤めた後、現在は経営コンサルタント。
本書の基本内容は、著者の他の本と同様である(「税務署なんか怖くない」参照)が、後半には本書独自の内容が含まれている。
まず脱税の手口として、収入の除外、経費の仮装、在庫の除外をあげ、それぞれについて詳細な手口とその発覚難易度を上げている部分は非常に興味深い。しかし著者も述べているとおり、重要なのはそれらの手口が税務調査官にとっては既知の事項であって、本書に載っている程度の手法では駄目なのだということであろう。
それでも読んだ印象ではなかなか手が込んでいるものがあって、「いけるかも」と思ってしまうが、おそらく読み手の税務・経理の知識が浅いからそういう印象をもつのであって、税務調査官のようなプロフェッショナルにとっては、お見通しもいいところなのだろう。
末尾には、著名人による脱税ニュースを取り上げて解説する。手の込んだ手口の解説の後で読むと、それらの脱税手法が以下に稚拙で幼稚なのかと思わせるという、興味深い構成になっている。
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11 月 19th, 2006
食肉関連業「ハンナン」グループのトップに立つ、浅田満を扱ったノンフィクション。浅田は、被差別地域出身という出自ながらも政界や同業者、暴力団、同和問題の活動グループなどへのパイプを活用し、巨大な企業グループを形成するに至った。重要人物でありながら一般に知られていないのは、浅田自身が意図的に隠れようとしている点と、メディア関係者らにとってタブーになっているという点があるようだ。
人脈を活用した事業展開で興味を引くのは、部落解放同盟をはじめとする活動グループと、行政機関のパワーバランスに便乗する点だろう。活動グループのエセ同和と呼ばれるごり押しは、行政機関によくある事なかれ主義と見事に調和して、結果的に公金がハンナングループへ流れていくという構造を生み出す(Wikipedia:えせ同和行為、同和利権の真相)。
こうしたエセ同和による構造は、最近では2006年秋に奈良市職員におさまった部落解放同盟の奈良県連幹部が、ほとんど出勤しないにも関わらず市職員としての給与を得ていたという事件にもあらわれている。こうした構造があることを考えると、差別問題を扱う他の本、例えば鎌田慧:ドキュメント屠場(1998)の内容にも奥行きが出てくる。つまり、一般社会へ影響力を発揮することや、そうした影響力を行使できる可能性を基盤として、政治家らへの人脈を築くことも可能になるのだろうと推測できる。
肝心の浅田満に関する著述としてはかなり詳しいのだと思うが、やはり現在進行中のお話しということもあって取材に相当の困難があったようだ。同氏の話題があらゆる立場から客観的にかつ詳細に書かれるのは、おそらくもっと時間が必要だと思われる。浅田と関連する人物についても、その人物の社会的文脈まで網羅するには枚数が足りなかったのか、背景知識が無ければ本書を楽しむというところまで到達できそうにない。とはいえ、一般のメディアに登場しない話題でもあるので、そうした点では貴重である。
【関連書籍】
鎌田慧:ドキュメント屠場(1998)
屠場労働者に取材したノンフィクションで、職業差別問題も扱う。
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8 月 6th, 2006
組織に身をおくことに適正が少なく、独立せざるをえない人向けに書かれた本で、著者は30年以上も無料職業相談を営んでいる。サラリーマンの継続を再考するようにとまず述べ、それでも独立開業を選んだ場合には、どうしたら自営業としてやっていけるかという点を様々な職種を例にとって述べる。
独立起業というと、ギラギラした人たちがやるものというイメージがあり、関係する書籍もやたらに煽り立てるものばかりである。しかし中には、会社勤めが苦しくて仕方ないとか、一人で自由にやりたいという人も存在する。こうした少数派の人たちは、誰にも相談できず進退きわまってしまう。本書では、消極的理由で自営業を選択する人たちにとって大きな励みになる。
独立を思い立った場合、どんな業務領域を選択したら収入になるのかというのは、現実的な悩みである。反面、自分の専門はこれだからこれをやろうという人もいる。著者の相談を例にした本書では、いずれのタイプの人にとっても熟考すべきことが多数あることを指摘している。
業務領域が決まらない人は、スキルの棚卸をして現実的な収入の道へと接続するし、すでに専門を決めている人には、その道の落とし穴と安全な迂回路を案内する。すでに独立開業の決心をした人でも、本書の相談例を読むことで注意すべき点がまだ残っていることを教えられるだろう。
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7 月 18th, 2006
誘拐、立てこもりなどの危機的犯罪を専門に扱う、警視庁捜査一課特殊班の活動をまとめたノンフィクション。扱っている実際の事件は、昭和60年代から平成元年以降の数年内に起こったもので少々古いが、緊迫した捜査活動の内容が詳しく述べられている。
本書を読むと、誘拐など緊急対応を要する犯罪が、少しの失敗で恐ろしく結末が変わるのだという厳しい現実があることに気付かされる。誘拐犯からの電話の逆探知は、体勢を整えるまで時間がかかるし、家族らの協力も不可欠である。例え逆探知に成功しても、犯人がすばやく移動すれば補足は容易でない。犯人補足のために、広域に人員を配置しようとすると、訓練を受けていない警官まで駆り出すことになり、訓練のあるなしは緊急時の対応を大きく分ける。
人員が広域に点在すると、企業組織でもよくあるコミュニケーションの問題が発生する。誘拐などは保安上、通常の警察無線を使えない場合もあるため、コミュニケーションの失敗が危機につながる。特殊班の事件は、通常業務と異なるプロジェクトチーム形式で操作にあたるが、これはコミュニケーションの問題をさらに深刻にする。
なじみのない特殊班の内幕が詳しくわかるのはいいが、人物のしゃべりが刑事ドラマじみているのはなんとなく辟易する。本当にそうしたセリフをしゃべっているのかもしれないが、せっかくのリアリティが台無しである。多くは捜査官へのインタビューを元にしているようだが、人々の記憶は時間経過によって変化するものである(菊野春雄:嘘をつく記憶(2000))。むしろ家族を思って強行突入を断る警官のほうが、リアリティを感じさせる。
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