シュガーマンのマーケティング30の法則

12 月 24th, 2008

セールスや広告コピー作成に使える30の法則を紹介する本。例えば下記のような「考慮すべきポイント」をあげている。

・一貫性の原理: 購買を決めた後は「ついで買い」を誘いやすい。
・顧客の特徴: 商品に顧客が求めている感情的ニーズは何かをつかむ。
・欠点の告知: 商品の欠点は最初に伝えなければならない。
・抵抗感の克服: 顧客の感じる「買うべきでない理由」を克服すること。
・巻き込みとオーナーシップ: 商品を所有したときの間隔を伝える。実際の商品やその一部に触れてもらう。
・ストーリー: 顧客が興味を持ちそうな物語で商品のことを伝える。
・権威: 専門性を伝える。
・お買い得感: 値段の異なるものをどういう順序で勧めるか考える。
・感覚: コピーに利用するキーワードの感覚的な相違に注意する。モーテル/コテージ、ソビエト/ロシア…
・理屈による正当化: 感覚は購入のきっかけ、理屈は意思決定の補強(納得)に使う。
・強欲: 値段が高いと、より多くの説得が必要になる。
・リンキング: 顧客がすでに知っている知識と結びつければ、商品を理解しやすくなる。メタファの利用や、流行への便乗。
・帰属欲求: 商品の所有者グループに所属したいという意識を利用する。
・収集欲求: コレクションしたいという意識を利用する。
・切迫感: セールストークは時間とともに風化する。意思決定の先送りを回避する。
・限定: 少数の人にしか所有できないことを動機付けに利用数r。
・単純明快さ: 広告内容を単純でわかりやすくする。
・罪悪感: ギブアンドテイクの感覚を利用する。購入前のサポートを馬鹿丁寧にやる。
・具体性: 実例や数字などをコピーに入れる。390kmの血管、72,000の末梢神経、など。
・親近感: 宣伝を繰り返して、商品名やブランドネームになじみをもたせる。
・パターンニング: 似た商品の売り方を参考にしてみる。
・期待感: 期待はずれだった場合、信頼性を損なう点に注意する。
・市場とのマッチング: 受け入れられやすい商品を提供する。
・考えさせる力: 顧客に考えさせるセールストークで、商品への期待を持続させる。

興味をひく実例などを盛り込んでいて、予備知識なく読める。セールストークや広告コピーなど、消費者コミュニケーションを考える立場の人に適している。特にコピー作成の端緒を知りたい人は、そばに置いておきたいと思うだろう。
【言及しているブログ】
http://d.hatena.ne.jp/shunsuk/20081015/1224072223
http://book300.jugem.jp/?eid=251
http://changejlife.seesaa.net/article/110988880.html
http://blog2.hope-age.net/book/post_27.html
http://diarydairy.seesaa.net/article/106709638.html

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渡辺千賀:ヒューマン2.0 (2006)

3 月 11th, 2007

フリーランス風の就業形態をヒューマン2.0と呼び、シリコンバレーでの実体験や観察、豊富な文献を元にその就業形態の詳細を述べたもの。仮定されているはずのヒューマン1.0とは、おそらく日本の伝統的な正社員雇用の就業形態のことだろう。流行キーワード風のタイトルであるのは、マーケティング上の配慮と思われる。

フリーランスの就業形態に関する話は、舞台がシリコンバレーである点を除けば目新しいところはない。当地では就業人口のうち15-30%がフリーランスとされている。30%だとかなり多いなという印象を受けるが、下限の15%だとそうでもない。日本での自営業者の割合は、全国平均で11%である (矢野恒太記念会:データで見る趨勢2007年版より)。フリーランスと自営業を同じとしてしまうのは少々乱暴だが、それでも企業の庇護下にない者の割合という意味では、1割程度で大きいとはいえないだろう。(15-30%と、幅があるのが気になるが)

長期安定雇用がその人の能力開発にとってリスクだというのは、今さらながら気づかされた気がする (pp.87-88)。雇用と人材の市場がシリコンバレーほど流動的でない日本では、実際の生活の上では直接的な脅威になっていない気がするが、現実的には能力開発の機会を失っているだろう。

個人的には能力開発の機会損失は大きく見積もるが、多くの日本人の共通認識はどうなのだろうか。能力が無くても給料がもらえるから、長期安定雇用こそ勝ち組みなのだろうか。それとも万一に備えて、会社を替わってでも能力開発の機会を取るのだろうか。

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山本譲司:累犯障害者 (2006)

2 月 24th, 2007

刑務所を出所しても再び犯罪を犯し、刑務所に戻ってくる障害者に焦点をあてたノンフィクション。著者は、よく刑務所モノを書いている安部譲二とはジョージ違いで、元衆議院議員。演歌歌手でもない。公設秘書の給与を流用した罪で服役し、その際に本書につながる累犯障害者らと出会った。

2001年に浅草の路上で短大生が惨殺された事件を記憶の人は多いと思われるが、その犯人が障害者であったことを知る人はほとんどいないだろう。本書冒頭では本事件の顛末を述べるほか、
・障害者を利用して未解決事件の犯人に仕立て上げる警察・検察
・障害者の身元引受人になって養子とし、障害者年金を横取りするやくざ者
・売春に存在価値を見出すが、その意味がわからず女衒に搾取される障害者親娘
・健常者が知りえないろうあ者独自の文化
など、衝撃的で新鮮だがやるせない話が続く。障害者が健常者の文脈で犯罪を犯しているのではなく、健常者との文脈の相違によって犯罪者とマーキングされているのである。

また、ろうあ者が使う手話が、日本語対応手話とろうあ者が使う手話に実質分かれているという指摘には驚かされる。この言語としてのろうあ者手話によって彼ら独特の文化が生じており、ろうあ者コミュニティは良くも悪くも強い結束と閉鎖性を持っているという。

著者の視点は多面的で、できるだけ建設的にあろうという誠意が感じられる。根本的な問題の解決はそう簡単にいかないであろうが、ベストセラーという形態で社会に素材を提示した点は、賞賛に値する。

累犯障害者
累犯障害者
山本 譲司
新潮社 (2006-09-14)
ISBN-10: 4103029315
ISBN-13: 9784103029311

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中嶋博行:君を守りたい (2006)

1 月 5th, 2007

いじめを受けている被害者を緊急に救済するという観点で、いじめ対策の言説を述べた本。著者は弁護士で、文芸書や漫画原作の作家でもある。

冒頭では、性暴力や被害者の自殺にいたったいじめの事例が紹介されている。当事者や周囲の人物の行動や態度が詳しく記述されており、これがごく一部であったとしても、これほどひどいことが起こっているという現実に驚かされる。

一般に知られているように、私立学校ではいじめ加害者に対して退学等の厳しい処分が下される。本書では、2005年の週刊朝日に掲載された事例で、いじめ加害者の中学生が即日退学処分になったものを紹介している。加害者はある日、母親同伴で学校に呼び出される。学校にはすでに幾人かの生徒や保護者、教師らがおり、その場で退学処分を通知されたという。

こうした事例もやはりごく一部なのかもしれないが、そんなに厳しい学校もあるのかと驚かされる。放逐された加害者は裁判所に持ち込んだが、退けられた。この元・中学生は、その後どうなったのだろうか。

筆者はこうした状況を踏まえて、学校にはいじめを解決する能力がないと指摘し、加害者の自主更正に期待する立場や、いじめを集団全体の問題ととらえる立場が、いじめ加害者を助長させてきたと攻撃する。そして、いじめを主導する特定加害者に限定しつつ、出席停止や退学など厳罰運用による抑止力こそいじめ解決につながると主張する。

おそらく中学生らにも読まれることを考慮してか、文章は平易でボリュームも多すぎず、さらに説得力があってよい。しかし、教育性善説の立場(多くは公立学校関係者か)からすると、面白くないだろう。むしろ、個人的には学校がいじめを解決できないのは構造的なものであって、学校というより日本人の集団形成はそうした欠陥を含んでいるものであるからと考える。これだと筆者の立場からは「いじめ宿命論か」と言われそうだが、そんな単純な話しではない。

例えば、発言力の強い誰かに引きずられて集団の意思になるという構造は、日本の社会によく見られるものである。そうした意思決定を尊重することが大人になることだとか、世間を知ることだとされる。集団の意思決定の原因になった者を特定し、それに対して罰をあたえるというスキームは、暗黙の社会構造に反するもので、広く一般の支持を得られないかもしれない。

意思決定者に厳罰を与える仕組みは、おそらく社会の既得権者に刃をつきつけることになるだろう。例えば、「誤った意思決定者には厳罰を」の教育をうけた若者が新入社員として入社してくることは、多くの無能な管理職(=意思決定者)にとって針のむしろになる。それで無能な管理職が一掃されるのはいいことなのだが、多数派を形成する無能意思決定者らは、これを支持するだろうか。

多数の支持がなければ、民主主義社会で変化が起こることはない。集団の中に隠れて身勝手な意思決定を行ってきた者に厳罰を与える「健全な」社会は、果たして実現するのか。

【関連書籍】
今野敏:慎治 (1997)
いじめられていた冴えない中学生の慎治が、いじめっ子をやっつけるまでの話し。

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門倉貴史:マネーロンダリング(2006)

12 月 17th, 2006

マネーロンダリングについて解説した本。マネーロンダリングとは、非合法な手段であげた収益の出所をくらますために移動、あるいは形を変えて保管すること。(Wikipedia:資金洗浄)

例えば強盗で得た現金は、あらかじめ番号が控えられていたり、強奪時に目印がつけられていたりする。そのまま使うと犯罪で得た資金であることを明らかにするようなものであるから、別の紙幣に交換できればよい。このようなケースの事例として、韓国へ持ち込んで資金洗浄したとか、非合法カジノでチップと交換した後、再度現金化したとかいうケースが語られる。そのほかにも、有名なオフショア・バンクを利用する事例や、ネット・オークション、株式市場の親交株を利用する事例などが語られる。こうした金融犯罪は、一般のニュースではあまり目にしないだけに、本書のような平易な説明は非常に貴重である。

後半では、マネーロンダリングと関連した犯罪事案に関するレポートになっており、政治汚職、覚醒剤ビジネス、地下銀行などが語られている。

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